7月20日(金)48日め 宗谷丘陵を経て宗谷岬へ

次の目的地は知床。できれば羅臼岳に登りたい。ここも百名山の一つだ。

羅臼岳は、行程が長い(登山地図では片道6時間)、雲がかかっていることが多い、ヒグマが出る、などの理由で、登山初心者が1人ではリスクが高いかもしれない。まあ、とりあえず行くだけ行って、現地で考えよう。

ということで、宗谷岬に立ち寄ったあと、太平洋側の海岸線を南下することにした。

宗谷岬に向かう途中で、こんな看板が目に飛び込んできた。

メガソーラーか。話には聞いていたが実物を見たことはない。

よし、見てみよう。

ということで全体が見渡せる場所を探しながら走る。

全体はほぼこんな感じ。敷地は広く、写真の左右にも続いている。

1枚のパネルがデカい。鉄条網が上端で2mぐらいの高さなので、それから推測するとパネルの短辺が5mぐらいか。長編は4倍として20m、5倍だと25mということになる。うちの近所にある、畳20枚ぐらいのとは規模が違う。

宗谷岬に近づくと陸側が丘陵地帯になる。丘陵には発電の風車が立ち並んでいるらしいので行ってみることに。

宗谷丘陵の入り口。

「宗谷丘陵周氷河地形」とある。周氷河地形は地中の水分が凍ったり溶けたりを繰り返してできる地形で、山の部分も谷の部分も緩やかなカーブを描くことが特徴だ。

で、こんな感じ。穏やかな起伏が続いている。

少し走ると風車が立ち並ぶエリアに出る。

入り口の看板にあった宗谷岬ウインドファームの風車だ。57基の風車がある。

風車を過ぎると牧場に出る。宗谷岬肉牛牧場だ。「宗谷黒牛」が飼育されている。

う~む、だんだんテレビレポーターっぽくなってきた。

写真左手前は牛の水飲み場。右上に小さく黒牛が1頭。

写真を撮っていたら上にいた黒牛が近づいてきた。

水を飲んだあと、こっちを向いて長い舌でペロリ。耳に付いているのは個体管理用のタグだ。

たくさんの黒牛がいるが、風が強いので皆しゃがんで(寝そべって? 伏せて?)いる。

風がメチャクチャ強い。油断をすると相棒のバイクごと吹き飛ばされそうになる。こうでなければ風力発電はできない。

丘陵から宗谷岬に出る道を進むと、宗谷岬公園が見えてくる。

公園にある「あけぼの像」。左下に小さく「日本最北端の地の碑」が見える。

あけぼの像は北海道の酪農の夜明けを象徴しているという説明がある。畑作から酪農に転換するのは並大抵の苦労ではなかったろう。

上は公園内の公式な建造物の案内図。いろいろな碑や鐘や台や楼がある。

そこには記載がない建物がこれ ↓

間宮堂。ホタテラーメンで有名な店だ。

芸能人が多く訪れている。まあ、テレビ的には絶好の対象だ。

ホタテラーメン(塩)(普通盛り)

フツーに美味しい。グルメレポートはしない方針なので、以上。

間宮堂って間宮林蔵から取ったんですか? と尋ねたら、いいや間宮海峡から取ったの、という答えだった。

間宮林蔵が見つけたから間宮海峡なのだから、元は間宮林蔵だろうと思うが、
間宮林蔵→間宮堂、と
間宮林蔵→間宮海峡→間宮堂、とは違う、ということですね。

ちなみに間宮海峡の位置はここ ↓ 写真の左上。

「日本最北端の地の碑」と「間宮林蔵の立像」と相棒とのスリーショット。

間宮林蔵は間宮海峡の発見者として有名だが、実は江戸幕府の御庭番(おにわばん、政治の陰で動く忍者)でもあった。漫画『新・子連れ狼』では、大五郎の敵として間宮林蔵が登場する。像を見ながら漫画に登場する間宮林蔵を思い出して楽しかった。

(注)新・子連れ狼は、父の拝 一刀(おがみ いっとう)が亡くなったあと、息子の拝 大五郎(おがみ だいごろう)が一人で生き抜いていく物語。面白い。大五郎が賢すぎるのが欠点か。

日本最北端の地の碑から右に20mほど歩くと「宗谷岬音楽碑」がある。

ボタン(写真右下)を押すと、スピーカー(写真左上)から歌と音楽が流れる。

流水とけて 春風吹いて
ハマナス咲いて かもめも啼いて

フォーク調のゆったりしたいい曲だ。歌っているダ・カーポもいいグループだ。「結婚するって本当ですか」も好きな曲だ。ちょっと切ない、キュンとなる曲。

さて先を急ごう。今日は紋別泊まり。180kmちょっとある。

と、その前に、ガソリンを入れなくては。まだガソリンは半分以上残っているのだが、どうしてもここで入れないといけない理由があるのだ。

それがこれ ↓

日本最北端給油証明書。のようなもの。

宗谷岬にきてこれを貰わなかったらライダーとして恥ずかしい。 と言われているとかいないとか。

風が強い。吹き流しは真横になってバタバタとはためいている。

相棒ごと吹き飛ばされないようにバランスを取りながら走る。走る。走る。

風車を横目で見ながら走る。走る。走る。

パーキングシェルター。ドライバーが一休みできる。特に冬は助かるだろう。

自販機、トイレ、電話がそろっている。

でも、こっちは休まずに走る。走る。走る。

一直線に伸びた道。北海道の道のイメージがこれだ。

牧草地に出る。

そこでは牧草を梱包する風景が。

円柱状の牧草を白いシートで巻き始めたところ。牧草の周囲を機械がグルグル回転してどんどん巻いていく。

グルグルと巻き続ける。牧草が見えなくなった。

巻き終わると白いシートが切断される。上がその瞬間。白い梱包の左側がパンッと跳ねているのが分かるだろうか。切断されたシートの端っこだ。

巻かれた牧草が地面にゴロンと投げ出され、機械は次の牧草へと向かう。

さて、こっちは紋別へと向かおう。

乳牛がいる。強風対策なのか寝そべっているのが多い。手前の牛が、何だこいつ、という顔でずっとこちらを見ていた。写真を撮るとあわてて目をそらす。ちょっとシャイなやつ。

ベニヤ原生花園に立ち寄る。時間はないが、まあ、着くのが遅くなるだけだ。

ノハナショウブ(野花菖蒲)が見ごろ。栽培されている花菖蒲の原種だ。

群生している。

こちらはコウリンタンポポ(紅輪蒲公英)。ヨーロッパ原産の帰化植物。ということは元外来種? 長い時間が経つと帰化したとみなされるのだろうか?

出発しようとしたときにスクーターに乗ったライダーがやってきた。何となく話をしていると、なんと相棒カブのカスタムをお願いした岐阜のバイク店のすぐ近所だという。

オレもね、カブのカスタムの見積もりをとったことがあるの。頼まなかったんだけどね。クロスカブ風にしてるのか。ちょっと写真撮らせて。帰ったらバイク店に行って、こんな人と北海道で会ったよって話すから。覚えてるかな?

ということで、例によって記念撮影の2+2ショット。バイク店のご主人とおねーさんによろしくね。きっと覚えていると思うよ。

さあ、急がねば。

そろそろ紋別、というあたりでこんな光景が。ここまで来ればもう余裕だ。写真撮っておこう。

刈った牧草を、機械の後ろの回転する爪状のもので集めて、山脈状にしている。

正面から見たところ。機械に向かって右側に牧草が集められているのがわかる。

集めた牧草をグリーンの箱が飲み込んでいく。黄色い部分が飲み込み口だ。

一杯になると、パカっと開いて丸めた牧草を地面に落とす。なるほど。

今日は「牧草の束ができるまで」を学べてよかった。学ぶ順序は実際とは逆だったけどね。

【本日のデータ】

ホタテラーメン(塩、普通盛り):900円(税込)

日本最北端給油証明書(のようなもの)+ ガソリン1.6L:251円(税込)

7月19日(木)47日め 稚内散策

昨日、利尻富士に登ってバテバテなので、今日は稚内に渡ってのんびりしよう。

ということで、フェリーで利尻島から稚内に渡る。

フェリーには、大学を休学してスーパーカブで旅する若者とか、オフロードバイクに乗るアラサー女性(一人旅)とか、いろいろな人がいて、けっこう話もしたのだが、疲れていて写真を撮るのをすっかり忘れていた。ということで省略。

稚内に着いたら、鉄道マニアならまずここに行く、というところに行く。

稚内駅の「日本最北端の線路」

稚内駅構内を通過してさらに少し北まで伸びている。

というのはJRの旅行客用サービス。もちろん、本当にここまで列車が来るわけではない。ここは黄色がポイントのツーショットなのだ。

次は、ちょっと走って「稚内港北防波堤ドーム」へ行く。歴史的なことは省略。上をクリック/タップしてウィキペディアを参照してね。

ローマ風のデザインがいい。右のフェリーと左の照明もいいでしょ? 撮影地点を決めるのに10分ぐらいかかった貴重な映像(笑)

稚内で一番興味深かったのはこれらの標識 ↓

3つに共通する稚内だけの特徴がある。もちろん地名以外で。

さて、それはなんでしょう?

↓ 3

↓ 2

↓ 1

↓ 0 日本語と英語に加えて、ロシア語が記載されている、ということ。

商工会議所の壁にも。ロシアとの繋がりが深ったことがわかる。

観光客向けではない、生活に溶け込んだ風景がいい。

これもそう。観光客向けではない風景。一時的に使わないので陸に上げてある。なかなかいい顔なのでツーショット。

これもそう。2隻の間でご満悦。

これもそう。「3あ運動」というネーミングがいい。あいさつ、あんぜん、ありがとう。多くの大人がすっかり忘れている言葉だ。

最後に野寒布岬(ノシャップ岬)灯台とツーショット。

昨日の疲れが抜けないので15時に宿にチェックイン。

おやすみなさい。

7月18日(水)46日め 利尻富士に登る

昨夜は、フェリーターミナルのある鴛泊(おしどまり)の宿に泊まった。登山口は近くにある。

0615 コンビニで飲み物と食料を買い、登山口の北麓野営場(ほくろくやえいじょう)に向かう。

0625 到着。登山準備を開始。

このとき、うっかりして食料を地面に置いたのが失敗だった。

バサッと羽音がしたのでそちらを振り向いたら、カラスがアンパンを咥えて飛び上がったところ。アンパンを咥えて「へへ、間抜けなやつ」という顔をしてこちらを見ながら飛び去った(ような気がする)。

これがそのときと同じアンパン。

朝食を取られてしまった。地団駄を踏んでも後の祭り。朝食は抜きだ。

ここから出発。ヒグマ対策の鈴は昨日買った。青銅製で澄んだ良い音がする。少し響きすぎてうるさいが、そのほうが効果はあるだろう。

15分ほどあるくと「甘露泉水」がある。日本百名水。入れ物がないので素通り。

少し行くと3合目。標高270m。

そのちょっと先には姫沼への分岐点。姫沼もなかなか良さそう。登山をしないならこちらを歩くのがいいかも。

登山道を40~50分進むと4合目「野鳥の森」。標高390m。ここまではなだらかな歩きやすい道。

先へ進む。石は増えるが普通の登山道が続く。

さらに40~50分ほどで5合目「雷鳥の道標」。標高610m。

振り向くと礼文島が見える。

さらに登る。木々の間からときどき山頂が顔をのぞかせる。山頂が見えるとがぜんやる気が出る。目標地点がはっきり見えるのはいいものだ。

登るにつれて礼文島を見下ろす角度が変わる。登りながら何度となく見るが、飽きない。

6合目「第一見晴台」に着く。標高760m。

あまりに景色がいいので、パノラマ写真を撮ってみた。拡大して大きな画面でご覧ください。

礼文島のアップ。平らな島なのがよくわかる。

7合目「胸突き八丁」。標高895m。ここからもっと急になるわけだ。まあ、覚悟はしている。

急なので下を向いて黙々と登っていたら、木の枝に頭を思い切りぶつけてしまった。

その枝がこれ ↑ コブができたらしい。頭が少し膨らんでいる。押すと痛い。

同級生の登山の師匠に「下ばかり向いているとダメ」と教わったが、まったくその通り。師匠! 大事な教えを再認識しました。

ここまでは、一休みするたびにチョコレートを食べてエネルギーを補給してきたのだが、今回は金平糖を食べることにする。

「幸せを呼ぶ金平糖入り」と書かれた赤い紙袋。その中に白い袋が入っていて、金平糖はその中だ。金平糖を撮影するのは時間がかかるので袋だけ撮影。

金平糖を食べながらふと見上げると飛行機雲がどんどん伸びていく。あわててシャッターを切る。

何とかうまく撮れた。上の写真をクリック or タップして拡大すれば機体がはっきり写っているのがわかる。

こんなことで喜んでいるんだから単純ですねぇ。と言われるのは覚悟の上。人間は単純でいいのだ。

さらに登ると第二見晴台。八合目はまだ先だ。

標識の側面には行程時間情報が書かれている。ここまで180分ということだが、200分ほどかかっている。遅れ気味ということだ。山頂まで130分では無理だろう。150分はかかると考えたほうがいいだろう。頑張らねば。

どのくらいの角度なのか知るために左の稜線を撮影してみた。

40度ぐらいか? 道はあまり蛇行せず、ほぼ一直線に頂上へ向かっているので、ほぼこの角度で登っていることになる。

振り向くと礼文島が見える。ホッとするひと時。

はあはあと息を切らしながら8合目「長官山」にたどり着く。標高1218m。ここが山という意識はなかったが、マップを見ると確かに「長官山」と記載されている。

あと2合。まだまだ先は長い。

少しなだらかな道が続く。つかの間の休息だ。遠く避難小屋の赤い屋根が見える。

避難小屋に着く。朝食抜きなのでバテるとまずい。オニギリを1つだけ食べることにする。たらこにしよう。残りは鮭だ。

食べて少し元気が出た。はあはあと息をしながら黙々と登る。

やっと9合目。いや、ついに9合目。標高1410m。携帯トイレブースがある。トイレではない。持参した携帯トイレを使う場所だ。使ったものは自分で持ち帰る。

さあ、ここからが正念場だ。

下山する人とすれ違う。道が狭いのでどちらかが待って譲り合う。

バテバテの人が岩の上で休んでいた。声をかけると、もうこれ以上無理なので、引き返すと言う。せっかくここまで来て、と思う。だが、この先がどれだけきついのか見当がつかない。その判断が正しいかもしれない。

(注)結果的にその判断が正しかったと思う。ここから頂上へ行って、またここまで戻るのに3~4時間かかった。あの様子では無理だったろう。

この地点での傾斜はこの角度。

右側の斜面。

左側の斜面。

さらに登ると崩れやすい土になる。試験的な補修をしている、との標識がある。

上のほうにV字形に切れ込んだ部分がある。あそこを越えると頂上はすぐだ、と下山者が教えてくれた。

V字形のところで下山者とすれ違う。慎重に動かないと土が崩れてズルっと落ちる。

後ろを振り返るとこんな風景。さすがにちょっと怖いかな。

崩れを防ぐいろいろな工法を試しているようだ。

根雪の脇を通り過ぎる。

黄色い花が咲いている。たぶんボタンキンバイ。利尻山上部に咲く固有種、ということだ。

この地点では左右はこんな感じ。

 

登るほど急になっている。

もう少しだ。この岩を越えれば、、、

見えた! あれが頂上だ。

狭い稜線を通る。右側を見下ろすと、、、

12時35分、頂上(北峰)到達。標高1719m。6時50分出発なので、5時間45分かかったことになる。

神社の左手に見えるのはローソク岩。

周囲360度が見渡せるパノラマビュー。

神社の裏。西側。

北側。礼文島が見える。

東側。正面やや右手に稚内が見える。

南側。先に見えるのが本峰。標高1721m。

登山地図に「ルートが崩壊して危険なので行かないように!!」とある。「社のある北峰を山頂としている」とのことなので、ここまででいいだろう。

例によって記念撮影。石の間から礼文島が少し顔を出している。

残り1個のオニギリ(鮭)を食べる。最高に美味しい。

1300 出発。ゆっくり休んでいる時間はないのだ。

下りながら見る礼文島も素晴らしい。

避難小屋の赤い屋根が見える。この角度からだと登山道がよくわかる。尖っているのが長官山。確かに山だ。

少し下ったところから山頂を振り返る。うっすらと雲が流れる。

下りは4~5時間。延々と長い。

足がガクガクしてくる。気力で歩くしかない。

冷たいビールを思い浮かべる。夕飯は何にしよう? 登頂記念に奮発しよう! イクラとサーモンの二色丼にしよう。いや、筋肉増強のために肉のほうがいい。トンカツカレーか、焼き肉弁当にするか。

浜口なにがしの「気合いだ、気合いだ、気合いだ~」を真似して気合いを入れる。

気合いだ、気合いだ、気合いだ~。ビールだ、ビールだ、ビールだ~。

水を飲み切ってしまったので、スポーツドリンクゼリーを吸う。う~む、水の役目はあまり果たせない。

麓まで行けば甘露泉水がある。

名水はまだか、名水はまだか、気合いだ、気合いだ、気合いだ~、と繰り返しながら歩き続ける。

麓になるにつれ道は歩きやすくなったが、それにしても距離が長い。足がもつれる。だが、まあ、歩き続ければ確実に着く。18時前後には着けるだろう。何の問題もない。ただ疲れただけだ。

温泉とビールと夕飯のことを考えながら歩き、甘露泉水にたどり着く。

空になったソルティライチのペットボトルに名水を汲む。

うまい! 確かに名水だ。500mlを一気に飲んでしまった。

17:50 北麓野営場に到着。出発から11時間ちょうど。

【編集後記】

富士山の2倍くらい疲れた。11時間ほぼ休みなしというのは辛い。

腰を下ろしたのは避難小屋で1つめのオニギリを食べた5分間だけ。山頂でも座る時間はなかった。そのくらい休まず急いで何とか18時になる前に下山できた。

出発が遅くなったのが反省点だ。5時ごろ出ていればもっと休む時間が取れたはず。

一方で、天気が良く、雲も風もなく、最高の登山日和だった。

無神論者だが、神様ありがとう! と言いたくなった。